融人の組織
ここでは『ガイアケアTRPG』の世界に存在する勢力の中でも、融人を主体とする組織を紹介する。
ここでは『ガイアケアTRPG』の世界に存在する勢力の中でも、融人を主体とする組織を紹介する。
Bremen Harmonix。
強大な力を持つ越境者で構成された脅威の集団。
人間を根絶し世界を融人のものにすることを目的にしている。
世界各国の超常的な力を使ったテロ事件や、容疑者不明の破壊行為の多くに彼らが関与していると言われており、社会に与えた損害は計り知れない。
組織を結成したのは、驚異的な特殊能力を持つ4人の越境者である。
融人化する以前、今ほど大きな力を持たなかった彼らは、あるものは虐げられ、あるものは残虐に弄ばれ、あるものは畏れられ、あるものは飢えていた。
彼らが越境者として人間の姿を得たとき、生来その身に備わっていた不可思議な能力は飛躍的に強まり、もはや災害と呼べる規模にまで拡張された。周囲の人間を皆殺しにした彼らは世界をめぐり、人類の醜悪な営みを目の当たりにする。人類への憎しみを募らせていった彼らは、惹かれ合うようにドイツで出会う。始めはルキウスとバーゲスト。次にコカトリス。最後にカシャ。4人で共に過ごすようになり、しばらく経ったある日に誰かが提案した。
「人類を根絶しよう」
この日より、彼らは『Bremen Harmonix』を名乗り、人類への復讐を開始した。
あまりにも強い力と強い憎しみを持つ4人の越境者を打倒する術は未だ見つかっていない。遠からぬ未来、人類は選択を迫られるだろう。彼らを鎮め、宥め、どうにか和解の道を歩むか。それとも彼らの憎しみに焼き尽くされ、滅亡するかである。
ルキウス
人類に破滅をもたらすべく暗躍するBremen Harmonixの首魁。
歩く災害であり、死と破壊をもたらすもの。
人間とロバの混血生物の越境者。
外見年齢は30代前半だが、実年齢は不詳の男性。飾り気は無いが上質な衣服に身を包む、堂々たる体格の美青年。端正な顔立ちをしているが、彼を目撃した人間は口を揃えて「どこかが決定的に歪んでいた」と証言する。
強大な力を持つ越境者はしばしば民話や伝承にその足跡を残しているが、ルキウスに関しては、歴史、伝説、神話の類が一切見つかっていない。ルキウスの足跡が記録されていないのは、目撃者が早々に命を落とすためである。目撃者の末期は様々で、その場でルキウスに殺害されることもあれば、どこかの街角で暴漢に刺されたり、奇妙な病気に罹患したり、あるいは突然姿をくらまして二度と見つからないこともある。
ルキウスとBremen Harmonixの存在が明るみに出たことで、世界中の事件・事故が再調査され、これまで無関係に思われていたいくつかの事件に関連性が見出されている。
ルキウスは、物静かで暴力を好まないといった普段の性格と、徹底的に敵対者を蹂躙・粛清する残忍さという際立った二面性を持っている。彼と相対した者は遠からず死を迎えるが、それまでの間、正体を知らずに友人として接している者もいるかもしれない。
組織の結成に居合わせた融人たちとは良好な関係を築いており、昔馴染みとして接しているようだ。彼は人情を理解し、協調性を持ち合わせている。仲間の危機にはその身を惜しまずに助力し、仲間の死には涙を流すだろう。
人の慈悲を携え、獣の如く殺戮する、ルキウスは人類滅亡の先触れである。
コカトリス・ナーガ
Bremen Harmonixの幹部にして、猛毒をまき散らすもの。ニワトリとヘビの混血生物である幻獣の越境者。
外見年齢は70代だが、実年齢は不詳の男性。スリーピーススーツを着こなし、老執事を思わせる上品な容姿をしている。顔は老人のそれだが、上半身は一見してわかるほどの強靭な筋肉に覆われており、鍛え抜かれた軍人のような迫力がある。
コカトリスは、Bremen Harmonixの結成に居合わせた越境者の一人である。毒と病魔を司り、視線を送るだけで病をばら撒き、吐く息は周囲を猛毒で侵す。しかし、彼がこの凶悪な能力を使用することはほとんどない。彼は怪物的な膂力を備えており肉弾戦を好む。普通の人間が彼の拳を頭部に受ければ、首から上がこの世から消えてしまうだろう。
コカトリスのルーツについて、彼に父親を殺された息子の証言がスコットランドヤードの調書に残されている。証言者曰く、コカトリスは黒魔術に傾倒していた父親が召喚した悪魔なのだという。証言者の父親は、私室に刻んだ魔法陣に、蛇、ヒキガエル、黒い雄鶏の血を捧げるという異常行動を9年間毎日欠かさず繰り返すという変質者だった。クリスマスの夜、証言者が父親の私室を訪れると、魔法陣の上で死体となった父親を見下ろす怪人が立っていた。証言者は、怪人と目があっただけで全身が石のように固まって動けなくなり、その隙に怪人は悠々と去っていったという。
コカトリスは、Bremen Harmonixの中で最も残虐であり、最も無慈悲である。彼の相手に選ばれた者は、会話の機会も与えられず、問答無用で殺害されることとなるだろう。コカトリスの毒牙から逃れるためには、彼よりも風上に居続け、視線から常に身を隠し、脚力で上回る他ない。
彼が冷静な状態であれば、これ以上執拗に追い回されることはないだろう。
もしコカトリスを怒らせてしまえば、彼の穏やかな表情は邪悪な笑みに変わる。背に生えた翼で空を飛ぶコカトリスに追い詰められた犠牲者は、強靭な蛇の尾で拘束され、全身に強烈な痒みが生じる神経毒を注入される。この毒に致死性は一切ないが、全身を襲う痒みは犠牲者が死ぬまで治まることはない。
コカトリスと遭遇し、逃走以外の方法で生還した者が一人だけ記録に残っている。中国南西部に住み、不治の病を患った男が、長年に渡りコカトリスと思しき者と共に暮らしていたと証言している。男は既に他界しており真相は不明のままだ。しかし、10歳時点で余命半年の宣告を受けた男は、72歳まで健康に生きた。彼は世界でただ一人、コカトリスを善人だと信じて生涯を終えた者かもしれない。
カシャ・キャスパリーグ
Bremen Harmonixの幹部にして、気まぐれなトリックスター。ネコと正体不明の地球外生命体との混血生物の越境者。
外見年齢は20代前半だが、実年齢は不詳の女性。猫のように尖った毛先が特徴的な赤橙色のミディアムヘアで、和装と洋装が入り混じる奇抜なファッションに身を包む。いつも唇の端を吊り上げるような笑みを浮かべており、見た者に奔放さと妖艶さを感じさせる。
Bremen Harmonixの結成に居合わせた越境者の一人であり、全ての猫の怪異は彼女が持つ無数の姿の一つともされる。水底から現れ、炎を操り、生者を地中に沈め、夜風と共に消えるなどその力は多岐にわたる。カシャは人間への憎悪は持ちながらも、人間が生み出す文化には強い興味を示しており、正体を隠して様々なコミュニティに潜り込んでいる。
彼女は融人となる以前から超常の力を大いに行使しており、世界各国に伝わる猫の怪物譚は彼女の足跡である。彼女が原種だったころの外見や能力は目撃者によって様々で、事件内容、規模、被害者、その全てに一貫性が無い。この様な一貫性のない伝承が彼女の足跡であると言われているのは、当人が気まぐれにあれは自身の行動だと人々に明かすからだ。
カシャはBremen Harmonixに所属する越境者たちの中で、遭遇した人間の生存率が最も高い存在であり、彼女と言葉を交わした経験がある者も多い。生還者の証言の中で最も注目すべきものは、彼女の最古の足跡についてだ。証言者曰く、カシャは人類誕生以前から生きており、還るべき故郷は地球外にあると漏らしていたという。
カシャと遭遇して生還した者は多いが、時おり見せる残忍さと狡猾さはBremen Harmonixの中でも際立っており、気まぐれに人間と関わり、気まぐれに人間を殺害する。
その正体を知ろうと知るまいと、彼女と長い付き合いを続けるのであれば、いずれ不可思議で恐ろしい事件に巻き込まれるだろう。
Bremen Harmonix創成の四人は、共通して名前に頓着がない。中でも飽きっぽく移ろいやすい彼女が自称する名は、出会うたびに変わっているかもしれない。
バーゲスト・ブラックドッグ
Bremen Harmonixの幹部にして怒れる番犬。イヌとクマとの混血生物の越境者。
外見年齢は10代後半だが、実年齢は不詳の男性。乱れた紺色の髪に、常に瞳孔が開いた獣のような目をしており、一見して彼の凶暴な性格を窺い知ることができる。
Bremen Harmonixの結成に居合わせた越境者の一人であり、ルキウスにとって最初の仲間でもある。
バーゲストの咆哮を三度聞いた者は、強い空腹感に襲われて身動きが取れなくなる。彼に影を踏まれた者は正気を失い、肉を摂取することを最優先に行動し始める。犠牲者はじきに見境なく肉を求め、様々な生物に襲い掛かるようになるだろう。
物理攻撃にも長けており、細身な身体に釣り合わない膂力で振るわれるかぎ爪は、人間程度であればたやすく両断するほどの威力を誇る。また、自身の首と胴を切り離すことが可能で、頭部は空中でも自在に動き、対象に食らいつく。バーゲストの命を完全に奪うのは不可能だとされている。彼の肉体は本人の意志によって非実体化することができ、どのような拘束からも逃れられる。
バーゲストは、ルキウスを含む幹部4人の中で最も強い憎悪を内に秘めている。バーゲストの原種は、カナダに住む登山家の主人に仕える忠実な番犬であった。
ある日、雪山へ狩猟に出かけた主人が雪崩に巻き込まれ、同行していたバーゲストと共に遭難する。僅かな食料と、偶然発見した鹿肉などで飢えをしのいでいたが、ついに主人はバーゲストの肉を欲して襲い掛かった。後に山岳救助隊に発見されたバーゲストの傍らには、主人の骨だけが残っていた。その後バーゲストはとある資産家によって引き取られる。この資産家は珍しい動植物を食すことが趣味で、引き取られた動物は彼の食卓に並ぶ運命にあった。しかしバーゲストが晩餐となるはずの日の前夜、資産家は突如体に変調をきたし、床に伏せてしまう。不調は何らかの呪いであると判断した資産家により、世界中から様々なオカルティストたちが連日連夜招かれた。
資産家がついに命を落としたとき、バーゲストは偶然居合わせた日本の呪術師に引き取られることになる。バーゲストの不運はここに極まった。呪術師がバーゲストを引き取った理由とは、彼が用いる呪術の触媒にするためだったのだ。バーゲストは首から下を地中に埋められ、13日間放置された。
次いで、飢えたバーゲストのちょうど牙が届かない距離に、脂の滴る肉が置かれる。空腹が限界に達したバーゲストは鼻先を突き出し、ついには自身の力で首を引きちぎってしまう。土地の霊性と怨念を帯びたバーゲストは、首だけとなっても生き続け、人間を飢餓に陥れては呪い殺す、最悪の呪物と成り果てた。
バーゲストの呪いは、対象が体内に蓄えているたんぱく質の量に比例して強力になる。犠牲者が肥えていればいるほど、多くの被害を生むだろう。対処法は、バーゲストの性格と呪いの特性によって確立されている。バーゲストは孤独に飢える者には呪いをかけないという信条を持ち、その制約を固く守っている。バーゲストと遭遇し生還した数少ない者は、いずれも栄養失調状態にあり、20歳未満で天涯孤独の子どもであった。また一宿一飯の恩義を重んじる気質があり、彼に純粋な気持ちで食料を分け与えた者は、その生涯を終えるまで彼の正体を知ることはないだろう。
冷川 莉生
あらゆる組織に紛れ込む変幻自在のスパイ。
古代に絶滅した爬虫類の越境者。
外見は30代前半の女性だが、推定3000歳を超えると見られ性別も不明。眼鏡をかけた端正な顔立ちで、常にオフィスカジュアルな服装に身を包む。
冷川はBremen Harmonixの主要構成員でありながら、事務員としてUNISON JAPAN内に潜伏している。表向きは亀陸と同様、窓口業務をこなす人当たりの良い事務員であるが、密かに書類の改ざんや架空の融人の登録、データの横流し等の工作を行っている。戦闘時には未知の技術で生み出された電子機器を駆使し、肉体の強度は人間と変わらないが高い戦闘力を発揮する。女性的な身体的特徴を有するため便宜上『彼女』と呼称するが、真の性別は不明である。
冷川という人格は、彼女の一面に過ぎない。彼女はその特異な能力により、容姿・体格・性的特徴の全てを変化させることができるからだ。冷川は肉体を変化させることが可能な爬虫類の希少種である。古代メソポタミアの時代には既に融人化しており、エリドゥ(現在のイラク南西部)で人間と共に暮らしていた。ある日、彼女は神を自称する男に出会う。一見してただの人間にしか見えなかったが、その男が披露した技術や知識は、人類が現代より数千年後に到達するはずの領域であった。神を自称する男を崇拝するようになった彼女は、彼の指示に従い、後の人類史に登場する多くの偉人の側で暗躍するようになる。現代の冷川が使用するオーバーテクノロジーは、男から譲渡された技術である。男が彼女に出した指示は完全に秘匿されており、その全容を知る者はいない。
Bremen Harmonixに所属してからは、カシャと昔話や宇宙談義で盛り上がっている姿が見られ、構成員たちからは古い知人であると推察されている。
偶然会話に巻き込まれたバーゲストは「なに言ってるか全くわからん」と零している。
冷川としてUNISON JAPANに勤務しているときの彼女は、融人保護官への協力を惜しまない有能な事務員である。人間として振舞っている彼女から得られる情報やサポートの内容は、亀陸から得られるものと変わらない。冷川は他の構成員と違い、人類への悪感情は持ち合わせていない。彼女の行動は全て、神を名乗る男の目標を達成するためにあるからだ。冷川と利害が一致する限り、彼女から重要な情報を得られる可能性がある。それでもなお、彼女を全面的に信用するべきでないだろう。冷川がBremen Harmonixに属している以上、神を名乗る男の目的は、人類根絶の過程に沿うものかもしれないからだ。
アペヤキ
全てを焼き払う炎の化身。
人類根絶を望むアカエゾゼミの越境者。
外見年齢は20代後半だが、実年齢は不詳の男性。燃え上がるように逆立った赤髪が特徴であり、非常に目立つ容貌をしながらも、街中でその姿が見かけられることは稀である。
アペヤキは、制御不能となった炎そのものである。彼と出会ったのであれば、その周囲は必ず炎に包まれている。炎を呼び起こす力を持っており、土地、物体、空間において、一度でもその場所に炎が存在した過去があれば、アペヤキの意志にかかわらず、その炎は再現される。
再現は一度のみであり、呼び起こされた炎が消火された場合、再び能力によって呼び起こされることはない。炎の中を自在かつ瞬間的に移動する能力も有しており、アペヤキの捕捉は困難を極める。
アペヤキの周囲には常に炎があった。
燃え盛る家屋の中に産み落とされたアペヤキは、卵から孵ると焼け跡の土に潜った。不思議とその地では火事が多く、灼熱の土中で幼虫期を過ごす。成虫となるため土中から這い出すと、外には木の一本も生えていない焼野原が広がっていた。アペヤキは仕方なく地面で羽化を迎えることにする。抜け殻から這い出てきたのは、成虫ではなく人間の子どもだった。この時、人の姿となったことにアペヤキが驚くことはなかった。「火の中でセミが育つものか」と考えていたアペヤキは、納得の方が強かったのだ。自分はセミではなかったのだと、彼は即座に受け入れた。
アペヤキの絶望は、融人となってから始まる。人里に到着したアペヤキは、住人に石を投げられ、追い回され、消防車で放水された。放水の威力は凄まじく、アペヤキは7日間も気絶してしまう。目を開くと、自身を攻撃した住人たちの村も、周囲の森も、山も焼け跡となっていた。
アペヤキは、これまでの人生を振り返ってようやく自身の力に気づく。成体となってから今まで歩いた道は、全て炭となっていた。
アペヤキは地球を歩き続ける。全ての火が再燃して、やっと彼は自由を手にするのだ。
彼も人類の根絶を望んでBremen Harmonixに所属している。人が生きている限り、新たな火が生まれるからだ。
アペヤキとの出会いは天災だと思うしかない。彼が近くに来てしまえば、あらゆるものが燃え上がる。アペヤキの行き先を予想することは難しい。彼はひたすらに火を蘇らせながら、あてもなくただ歩き続けているだけだ。アペヤキの炎から逃れたければ、彼の足跡を追うのが良いだろう。彼が通った後であれば、少なくとも彼の炎で焼け死ぬことはない。アペヤキを討伐したいのなら、彼に故郷を燃やされた復讐者と手を組むのが良いだろう。復讐者は粗暴で扱いづらいかもしれないが、交渉次第では道行きを共にすることができるかもしれない。