霧中復讐鬼談

1. はじめに
とある日、1人の依頼人が門を叩く。
融人保護管である共鳴者たちを訪ねたのは“石の付喪”の少年だった。
少年は「兄が数日前から行方不明になっている。どうか兄を探して欲しい」と共鳴者に依頼する。兄の足取りを追ううち、共鳴者は異様な事件に巻き込まれていく。
このシナリオは 『ガイアケアTRPG』 に対応しており、プレイヤー2人向けにデザインされている。プレイ時間はキャラクターの作成時間を含まずに3時間程度だろう。
舞台は2020年代の東京を想定しているが、概ね現代であれば多少の年代が変わっても進行上の問題はない。共鳴者の前歴などは問わないため、現在融人保護管として事務所を構えてさえいれば、既に他のシナリオを経験したキャラクターでプレイしても構わない。
事態の解決を目的とし、不可思議な現象や怪しい場所へ積極的に向かっていくことが望ましい。
肉体的な
導入シーンやエンディングシーンは、ナラティブにプレイしてもらうことを想定している。
DLやPLが不慣れな場合、イベントのリストやプレイング例を参照しながら進めて欲しい。
ナラティブ
ここでは『置かれている状況をもとに参加者が話し合い、互いの話を傾聴し、合意の上で共鳴者たちが見舞われるトラブルやその解決法などを考えてシーンを作り上げること』を意味する。
【共鳴者作成の手引き】
共鳴者たちは融人保護管として同じ事務所で働いている。
事務所の設定(立地や規模、その他の職員など)については、DLとプレイヤー間で話し合ってあらかじめ設定すること。都市部での探索を想定しているため、郊外に事務所を置くことは推奨しない。
融人保護管の職務はしばしば危険を伴う。時には暴走した亜獣に遭遇したり、凶悪な越境者に立ち向かわねばならないこともあるだろう。共鳴者たちはそれぞれ、ある程度の戦闘能力を身につけてシナリオに臨むこと。
ハンドアウト1(以下HO1)
HO1は人間だ。融人保護管として、融人に関係するトラブル処理を主に請け負う便利屋稼業で生計を立てている。名目は探偵、便利屋、その他任意のものでも構わない。複数の事件に対応した実績があり、UNISON JAPANから業務委託を受けることもあるだろう。
ハンドアウト2(以下HO2)
HO2は融人だ。HO1の相棒として共に行動している。なんの融人であるか、自分が融人であると周囲に知られているかは問わない。何一つ隠し立てがないとしてもいいし、相棒すらその正体に気付いていないとしてもいいだろう。
2. ディーラー向け情報
平安の時代、
大嶽丸は「鬼によって
鬼でありながら人間の姿で生き永らえたということに絶大なコンプレックスを抱えており、以来、自分と同様に人間の姿を持つに至った融人全てに強い憎しみを抱くようになる。
始めは亜獣も付喪も殺してまわっていたのだが、1000年ほどそのような日々を続けるうちに、自分が何のためにこのようなことをしているのかが分からなくなる。今では行為そのものが目的化し、「全ての存在はあるべき姿に戻るべきである」という
大瀧と名乗った大嶽丸は、様々な融人に接触しては『あるべき元の姿』へ戻るように誘惑し続けている。
現在から遡ること3年前。
兵庫県の山中で忘れ去られたままひっそりと時を送っていた隕石と、寄り添うように並ぶソハヤノツルギは突如融人となった。
ソハヤノツルギは平安時代に地球へ飛来して以来、全ての記憶を有していたが、隕石はほとんどの記憶を失っていた。
ふたりの融人はUNISONによって保護され、紆余曲折あった後に、共鳴者たちが事務所を構える街で2人暮らしを始める。ソハヤノツルギは隕石の兄を自認し、
隼大は宿敵大嶽丸の復活を悟っていたが、利春を養うべく肉体労働に励む。利春は小学校に通う生徒となり、日々を平和に暮らしていた。ある日、街中に立ち込め始めた濃い霧に、大嶽丸の接近を悟った隼大は弟を守るため追跡を始めた。ついに大嶽丸に肉薄するも、霧の中で不意を突かれた隼大は街はずれの
3. 主なNPC
大瀧
30代ほどの男性の姿をしているが、その正体は1000年を越える時を生きる大鬼、大嶽丸だ。この鬼は霧を自在に操り、火の雨を降らせる。
「全ての融人はあるべき姿を取り戻すべきだ」という妄執に取り憑かれており、様々な融人の前に姿を現しては誘惑を繰り返している。
大嶽丸は越境者であり、その原種は鈴鹿山脈に峰を並べた名もなき山である。これを【逸脱】させてしまえば、街中に突然山が降って湧くこととなり、周囲に甚大な被害が出るだろう。
大嶽丸を封じるためには、伝説のようにソハヤノツルギで首を刎ねる必要がある。
星ノ宮利春
外見年齢10才。9世紀に妙見山へ墜落した隕石の付喪。童子の姿で発見され、帝より
後に田村利春と名を変え、池の精との間に子をもうけた。ソハヤノツルギをもって鬼退治をした伝説の人物、坂上田村麻呂は田村利春の孫にあたるとされている。
死後再び隕石の姿に戻り1000年が経った頃、かつて兄により打ち滅ぼされた大嶽丸が復活し、それに呼応するように利春も付喪として第二の生を受ける。
星丸、そして田村利春であった頃の記憶はほとんど失っており、ただ隼大と名乗る兄「ソハヤノツルギ」を慕う幼い弟として共鳴者たちの前に現れる。

星ノ宮隼大
外見年齢20才。9世紀に妙見山へ星丸と共に墜落した退魔の刀「ソハヤノツルギ」の越境者。
まだ彼が剣であった頃、坂上田村麻呂によって振るわれ鬼神退治を成し遂げた。
かつて自身の刃によって首を落とされた大鬼「大嶽丸」が越境者として復活したと同時に、ソハヤノツルギも越境者となり目を覚ます。
共に目覚めた弟と共にUNISON JAPANを頼り、自身を星ノ宮隼大と名づける。
以降、大嶽丸の所在を探りながら、弟を養うべく肉体労働に励んでいた。
シナリオ開始の3日前、大瀧に不意打ちを受けて街はずれの藪の中に閉じ込められる。

関谷正志
実年齢40才、外見年齢40才の情報屋。
生まれついての融人であり、ウシガエルの亜獣。父親が同じくウシガエルの亜獣であった。
元々は商店を営む普通の男であったが、25才の誕生日に自身が亜獣であることを父から知らされ、能力のコントロールを覚えた。
カエルの跳躍力を生かし、ビルからビルへ飛び移り様々な情報を集めている。
大瀧に目を付けられ、逃げ場のない事務所の中で追い詰められた情報屋はついに完全なウシガエルとなってしまった。
立羽流留
実年齢2才、外見年齢10才。
表情に乏しい小学生女児といった外見だが、その正体は2年前に突如人間の姿を得たタブレット型コンピュータの付喪である。
利春と同じ小学校に通っている。保護者は仕事の都合でほとんど家を空けており、流留は半ば一人暮らしの状態で日々を過ごしている。
ある日の下校中、大瀧に目を付けられそのまま自宅に押し入られる。大瀧により【逸脱】させられ、原種の姿に戻りながらも、最後の力を振り絞りテキストアプリにメッセージを残した。